アサガオは夜を識らない。
ウミネコの声で目を覚ました。陽射しの射し込む車窓から外を見れば、前日の雨で増水した海上を飛沫を上げながら列車が進んでいた。夏の陽射しは白く、列車の軌跡を辿る曳波(ひきなみ)も白い。空は青、藍、碧。前方にはウミネコの集う穏やかな離島がより一層、緑緑(あおあお)と浮かんでいた。心は躍っているだろうか。それとも不安に圧し潰されそうか。ただ一つ、解(わか)っていることは。あの島で、夜を見ない生活が始まるんだ。雨降る夜の夢(きおく)を思い出す為に。アサガオは夜(アイ)を識(し)らない。 ▼もっとみる
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